ショッピング

「はい、エヴァンスお客様センター高野でございます。」

「注文お願いします。」

「ありがとうございます。お客様番号を・・・」

今日一本目のお客様が、どうか普通のお客様でありますように!

コールセンターの仕事の日、その日最初にとる電話がその日一日の運命を決める。
単なるジンクスかもしれないけど、最初に出る電話は緊張もするし、いきなりクレームだと萎える。
一日のスタートを切る電話には、問題のないお客様であってほしいのだ。

お客様に商品番号を言ってもらい、番号を入力する。
商品名が表示されたら、読み上げる。
個数を確認する。

順調なら、それだけの仕事だ。数字を入力するだけの簡単な仕事。誰でもできる。

が、中には商品を買おうかどうか迷っていてアドバイスを求められるお客様もいらっしゃる。

「ネイビーってどんな色ですか? 私に似合うかしら?」

「ネイビーは紺色でございます。 どなたにも合わせやすいお色でございます。」

これで納得してくださる方も多い。それはそれで不思議だ。

「ピンクベージュってどんな色ですか?」

「ピンクとベージュを混ぜたお色でございます。」

本当だろうか?自分でも半信半疑だが、他に言いようがなかった。

「どんな色ですか?」って聞かれても

「カタログで確認してください。」と答えるのが正解だと思うのだが
適当に答えても何故か了解されて、そのままご注文いただけることが多い。
ただ、なんとなく聞いているだけで、本気で色の質問をしているわけでもないのか?

「ヌードベージュってどんな色ですか?」

ヌード色とベージュを混ぜた色?
いや、「ヌード色」なんて言わないよな。
肌色?

「肌色に近いベージュでございます。」
思いついたことを適当に答えているだけ。

エヴァンス通販では洋服やバッグが人気だ。
コールセンターに電話をかけて注文するお客様は、カタログを見ながら
この洋服の色はどんな色かと質問してくる。
コールセンターには、現物が見本としておいてある物も多いのだが
全ての色はないし、あったとしても色を言語化して説明するのは至難の業だ。

「このバッグの赤は派手ではないか?」

と聞かれたときには、本当は現物があったけど

「申し訳ございません。現物を確認することができかねまして、カタログをご覧になって
判断していただけないでしょうか?」

と答えるようにSVから指示された。
色はあまりハッキリ言わない方がいい。後でクレームになるから。

カタログで見た色と違うとか、ネットで見た色と違うとか
電話で色を確認したのに自分が思っていた色と違うと返品されるお客様も多い。

電話で色を確認したって、どんな確認だよ?
所詮無理ゲーだろう。

そもそも色の見え方には個人差があり、私が私の見た色を100%正確に伝えたとしても
お客様にとって、それは違う色でしかない。

それに、色を言葉で表現するには限界がある。

通販でモノを買うなら、色が違ったなんてことをいちいち気にするな。
むしろ、へーこんな色だったんだって楽しんだ方が得だと思う。

洋服やバッグって実物を見て試着して買ったとしても
後になって、うーん、なんか違うなってことがある。
その時の気分次第かもしれない。
通販なんだから多めに見てほしい。

服や下着のサイズについてもよく質問されるけど、サイズ表を見て決めてから注文してほしい。

「私は身長の割には足が長いってよく言われますけど、股下はどのサイズですか?」

って聞かれても困ります。素直にご自分の股下をお計りください。

「最近痩せたんで、どのサイズがいいかしら?」

痩せてよかったですね。サイズをお計りください。

心の中では何とでも言えるけど、電話でいきなりこの手の質問を受けると固まってしまう。

「えーとですねぇ・・・ サイズ表をご覧になって・・・」

「えーと」なんていうと点数引かれるんだよね。
いつモニタリングされているか分からない。電話の内容はすべて録音されている。
「えー」とか「あっ」とかは厳禁なのだ。

そんな質問してくるなって思いながら「サイズを測ってください。」と答えるしかない。
ここでダラダラと話しを引き延ばすお客様も多いのだが
暗に自分のスタイルの良さを自慢しているようだが、自慢になっていない。
本当にスタイルがいいと思っているのなら数字で表現してくださいな。

正直に「ウエストがヒップよりデカいんです。」って言われても、
そんな体形に合うサイズなんかないので全体的に大きめのサイズをすすめるしかない。
ここまでくると入ればよしとしよう。

「きつめですか?」
というご質問には
「個人差がございます。」
で乗り切る。
個人差! なんて素敵な言葉! これは使える!
化粧品の効能とか健康食品の効果とか、全て
「個人差がございます!」

「どのくらい効きますか?」
「どのくらいで痩せますか?」

「個人差がございます!」

自分が通販でモノを買うときってこんな質問なんかしないんだけど。
そもそも電話で注文しないからか?
電話で話していると、つい聞きたくなってしまうものなのか?
買い物しながら店員さんとおしゃべりするのを楽しむ感覚なのかな?

こちらとしては、マニュアル通りの対応がベストなわけで、余計な質問はしないでーって思う。
ただ面倒だってだけじゃなくて、オペレーターの評価に関わるのだ。
丁寧な対応と同時になるべく短時間で会話を終わらせるという難易度の高いスキルは持ち合わせていない。

見てもいないのに「似合う」かどうかなんて分かりっこない。
洋服は生地の素材とか季節の話にもっていき、逃げる。
下着は一般的な下着より上等ですみたいな感じで逃げる。

本当のことなんて言えないし分からない。
テキトーに答えても相手がOKならそれでよし。