コールセンター

「はい、エヴァンスお客様センター高野でございます。」

あ、違った。今日は仕事はお休み。
寝起きからこんなセリフが無意識に出てくるなんて、もう働きすぎだね。
「休みの日は絶対に仕事のことは考えないぞっ」て誓ったのに。
パソコンも触らない。キーボードも見たくない。
新聞、雑誌、テレビもご法度。だって広告も見たくないから。

好きな音楽を聴いて、好きな本を読んで、ゆったりと過ごして自分を癒したい。
それなのに、もう
「はい、エヴァンスお客様センター高野でございます。」
が口癖になってしまった。
まるで呪文のように無意識に口から出てくる。恐ろしいわ。

私、高野真緒は、「エヴァンス」という通信販売の会社から委託されているコールセンターで働いている。
コールセンターとか請け負いというだけで世間では下に見られるというか、思いっきりバカにされることもある。
まあ、コールセンターのオペレーターなんて誰でもすぐになれるし、辞めていく人も多い。
いかにも人間を使い捨てにしてますって感じはする。
それでも、なんとか研修期間と試用期間を乗り越えたんだから自分で自分を褒めてみよう。

つい、ご褒美にって通販サイトで買い物をしすぎて、何のために働いているんだろうって反省もした。
コールセンターで働く人の中には超絶オシャレな人もいる。
毎回違う服を着ていらっしゃるが、お家のクローゼットを拝見したいものだわ。

もちろん、みんながみんなそんなにお洒落ってわけでもなく
上下ジャージですか?スウェットですか?体育教師ですか?って人もいる。
制服じゃないけど、毎回同じ服装ですよねって人もいる。
老若男女、人種の坩堝とまではいかないけど、普通の会社だったらありえない程の多様性はある。

とりあえず、ほぼ女子。男性社員は、社員なのか契約社員なのか知らんが、4名だけ。
偉そうにしてるけど、実は大したことない。が、態度はデカい。
近くに来られるだけで、イヤ~な感じがする。電話中なのに、不用意に声をかけてきたりするし。

あと、国籍を調べたわけじゃないけど、見た目は日本人だけ。話す言葉も日本語だけ。
地方で人件費が安いからなー。

50歳から働くことにして、普通に考えて、雇ってくれる所はコールセンターとあと数える程度だよなって
自虐的に選んだ仕事だった。ニート生活を続けるよりはマシだろう。
一応家事手伝いってことになっていたけど、私は立派なニートだった。

働き始めたといっても完全に自立しているわけでもないし、フルタイムでもない。
ただ、そんな人間も多くいるのがコールセンターだ。
年齢層も幅広く、人間関係に煩わされることもない。

仕事は電話を受けて、注文内容をパソコンに入力するだけ。
クレームやムダ話は「さようでございますか。」を連発して乗り切る。
ただし、電話での会話はすべて録音されているし、トイレの時間も記録されている。
電話にかかった時間、後処理にかかった時間も全て記録されている。

常に監視されているようで、(実際監視されている)そんな環境が辛かったけど
気にしないことにした。嫌なことは、スルーするしかない。

それに、いつでも辞められる、辞めやすい仕事ってことも気に入っている。

だから、もうちょっとだけ頑張ってみよう。